サプライチェーン・データインサイト: フーシ攻撃で世界のサプライチェーンが混乱【3月13日アップデート】

サプライチェーン・データインサイト: フーシ攻撃で世界のサプライチェーンが混乱【3月13日アップデート】

サプライチェーン・データインサイト:

 Updated: 2024年3月15日

 

概要:

  • 運河を通過する量は記録的な低水準の傾向。エバーギブン号座礁事故が起きた2021年3月の船舶輸送量と比較しても、2024年2月はその半分の航行数だった。
  • アフリカ港湾は物量の流入に見舞われ、混雑を招いている。しかし、この流入は地域経済により多くの資金をもたらし、インフラへの投資拡大に道を開く可能性がある。
  • 主要航路では、中央値で1~2週間の追加時間を伴うが、輸送時間は平準化傾向。
  • 606隻の船舶が紅海を避けるために喜望峰周辺に迂回。

イエメン武装勢力のフーシ派、引き続き商業船舶を標的に

フーシ派武装勢力は、サプライチェーンに大きな影響を与え続けています。船舶への攻撃は続いていますが、武装勢力はラマダンが始まるとともに攻撃を激化させることを約束しています。軍事グループは、フーシ派が与えている被害を軽減するための反撃を続けていますが、彼らは英国所有の船舶ルビマールを攻撃し沈没させ、船内にあった4万1000トンもの肥料のために「環境大惨事」を引き起こしました。この船の沈没は、アジアからヨーロッパへのデータ転送を担う通信ケーブルの損傷を引き起こした原因にもなったようです。フーシ派はケーブルを積極的に狙っていることを否定していますが、12月に攻撃が始まって以来、ケーブルが破損したのはこれが初めてではありません。

スエズ運河を通過する船舶量:

12月に攻撃が始まって以来、606隻の船舶が紅海を避けるために迂回しました。このため、スエズ運河を通過する船舶の数は過去最低となっています。2021年3月には、エバーギブン号が運河で立ち往生し、6日間通航を停止した事故がありました。コンテナ船の通航が129隻にとどまった2024年2月と比べると、2021年3月当時、事故で船舶が運河を通過できなかったにもかかわらず、船舶輸送数は278%多い数だったという比較結果が出ています。

スエズ運河を通過するコンテナ船数:このグラフは、1ヶ月に何隻のコンテナ船がスエズ運河を通過するかを示している。 フーシ派による商業船への攻撃は2023年12月から始まり、その結果、紅海ルートを回避したことで、スエズ運河を通過する船舶の量は大幅に減少している。1月と2月は近年で最も通航数が低くなっている。

3月の初期の数字を見る限り、この数字は引き続き低いまま続くことが見込まれます。また、ルビマー号の沈没により、さらに減少する可能性もあります。環境へのリスクを軽減するため、危険物を積んだ船舶は紅海を通らずにアフリカ周辺を迂回することを選ぶかもしれません。

輸送時間への影響:

紅海を回避するために航路を変更する船舶は、運河を利用する航路と比較すると、輸送時間が中央値で7日から10日増加します。以下のチャートは、3月10日までの主要航路の週間輸送時間の中央値を示しています。

紅海の主要貿易ルートにおけるコンテナ輸送時間の週間中央値コンテナ輸送時間(トランジット・タイム)とは、コンテナが出発港でゲートインしてから目的港でゲートアウトするまでにかかる日数のことである。 フーシ派による商業船への攻撃は12月10日の週から始まり、荷主は紅海周辺の船舶を迂回させるようになった。コンテナが最終目的地に着岸し始めるにつれ、輸送時間の増加が明らかになりつつある。

 中国発ヨーロッパ行き、東南アジア発ヨーロッパ行き、東南アジア発アメリカ東海岸行きはいずれも中央値で9〜10日増加しています。幸いなことに、この数字は横ばいになっており、キャリアが今後も紅海を避け続けるとなると、これらの輸送時間は新たな標準数値となるでしょう。下図は、アジアからヨーロッパおよび米国東海岸の主要港までの輸送時間の中央値を示しています。

アジアからの船舶の輸送時間の中央値(1週間あたり):船舶トランジットタイムは、船舶が積出港を出発してから荷揚げ港に到着するまでの時間を計測。船舶がスエズ運河を通らずに喜望峰を迂回するようになったため、アジアを出航する船舶の輸送時間が増加。

 

ロッテルダムとノーフォークはここ数週間安定してきていますが、アントワープ、ハンブルグ、サバンナは変動が続いています。しかしこれは、アジア発の港湾と港湾運営の違いによるところが大きく影響していると思われます。というのは上記のすべての港の輸出入のどちらにおいても滞留率は安定しており、すべての遅延が輸送時間の増加に関連していることを示唆しています。

以下の船舶スケジュールの信頼性チャートは、スケジュールの更新に基づき、輸送中のコンテナがどの程度遅れるかを追跡したものです。遅延は主要航路で9日から11日の間で推移しています。これまでのところ、上のチャートに反映されている実際の輸送時間(中央値は7~10日に近い)に鑑みるに、キャリアは実際より長い輸送時間を見込んでいるようです。

週間船舶スケジュールの信頼性-遅延日数中央値:スケジュールの信頼性は、船舶スケジュールに基づいて、船舶が当初の到着予定時刻を過ぎて到着する日数を測定する。 フーシ派による商業船への攻撃が始まって以来、更新されたスケジュールに基づく遅延日数の中央値が増加している。 これまでのところ、最も影響を受けているのは東南アジアからヨーロッパへの航路である。

 

上のグラフは、キャリアがスエズ運河を通過する前提でスケジュールを発表し続けていることを示しています。今後、喜望峰を通過することを前提にスケジュールを発表するか、そうでなければこの遅延日数は高いままが続くことが見込まれます。

  

アフリカの港への物量流入:

アフリカの港湾では、迂回船による物量の増加が見られます。迂回した船はアフリカの32の港に寄港していますが、迂回船による物量が最も多い港は、タンジェ、ダーバン、ロメ、ダミエッタ、エル・デケリアで、タンジェが最も多く寄港しています。

アフリカの港の船舶数: 紅海周辺での船舶の迂回により、アフリカの港湾では船舶の輸送量がさらに増加している。 このグラフは、12月11日の週から始まったフーシ派による商業船への攻撃により、迂回した船舶が各港にどれだけ入港しているかを概説したものである。 タンジェ港(Tanger-Med)は、迂回した船舶による船舶数の増加が最も大きい。

 

ダーバン港は、港で60隻もの船舶が待機する滞貨を抱え、物量の増加による問題について公に警鐘を鳴らした最初の港です。紅海紛争はこれを助長するものではないが、混雑の原因はそれだけではない。根本的な原因は、設備の老朽化とインフラへの投資不足です。タンジェ港はアフリカで最もパフォーマンスの高い港としてランクされているものの、物量の増加による影響を免れることはできません。下のグラフが示すように、輸出入ともに混雑の変動が激しくなっています。輸入の滞留は安定してきているようですが、輸出は先週時点で港での滞留時間の中央値が1週間となっています。

タンジェ港の輸出入滞留時間:タンジェ港は、アフリカ周辺を迂回する船舶の中で最も船舶数が増加している。 その結果、港のオペレーションは苦戦を強いられており、それはコンテナ滞留時間の増減が物語っている。

 

アフリカの港湾を取り巻く混雑の懸念はあるが、これらの港湾に対する世界的な注目が高まることで、港湾が将来も存続可能な選択肢であり続けるよう、投資と改善を推し進めることができるかもしれません。短期的には、港湾貨物量の増加は地域経済により多くの資金をもたらし、港湾の仕事に対する労働需要が増加する可能性があります。  

スエズ運河の貿易の歴史:

スエズ運河は1869年、地中海と紅海を経由して北大西洋とインド洋を結ぶために開通しました。それ以来、世界のサプライチェーンにとって不可欠な貿易ルートとなり、船舶がアフリカを一周するのに必要な7~20日の旅程を短縮しています。2021年に船舶が立ち往生し、6日間運航が停止したように、船舶の流れが中断することは貿易に大きな影響を与える可能性があります。 

海上輸送キャリアが運河を迂回する船舶のルートを変更する計画を発表しているため、スエズ運河を利用する貿易レーンは大幅な遅延に備える必要があるでしょう。

第一線で働く船員の安全への配慮

project44は、紅海の危機に関する最新情報を頻繁に提供しています。同時に、この困難な時期において、船舶の乗組員の安全が最優先事項であることに変わりはありません。乗組員の方々の安全を心よりお祈り申し上げます。

 

project44について
project44は、サプライチェーンを機能させることを使命としています。製造、自動車、小売、ライフサイエンス、食品・飲料、石油・化学・ガスなどのトップ企業を含む1,200を超えるブランドの年間10億件以上の出荷を追跡しています。project44を利用することで、世界中の荷送人と運送会社は、予測可能性、回復力、持続可能性を高めることができます。詳細については、www.project44.comをご覧ください。
免責事項:ここに記載されている情報は、project44 と第三者機関による報告の両方から得られたものであり、契約上の目的ではなく、あくまでも概要として共有されている。project44のデータには、入手可能なすべての市場情報が含まれているわけではなく、project44は第三者による報告を独自に検証することは行っていない。同様に、この種のデータは日々変化する。したがって、読者はこの報告書に依拠してビジネス上の意思決定を行うべきで はなく、project44 はかかる依拠から生じるいかなる責任も明示的に否認する。

 

 

【本インサイトレポートに関するお問い合わせ】

marketing_jp@project44.com

サプライチェーン・データインサイト:

 Updated: 2024年3月15日

 

概要:

  • 運河を通過する量は記録的な低水準の傾向。エバーギブン号座礁事故が起きた2021年3月の船舶輸送量と比較しても、2024年2月はその半分の航行数だった。
  • アフリカ港湾は物量の流入に見舞われ、混雑を招いている。しかし、この流入は地域経済により多くの資金をもたらし、インフラへの投資拡大に道を開く可能性がある。
  • 主要航路では、中央値で1~2週間の追加時間を伴うが、輸送時間は平準化傾向。
  • 606隻の船舶が紅海を避けるために喜望峰周辺に迂回。

イエメン武装勢力のフーシ派、引き続き商業船舶を標的に

フーシ派武装勢力は、サプライチェーンに大きな影響を与え続けています。船舶への攻撃は続いていますが、武装勢力はラマダンが始まるとともに攻撃を激化させることを約束しています。軍事グループは、フーシ派が与えている被害を軽減するための反撃を続けていますが、彼らは英国所有の船舶ルビマールを攻撃し沈没させ、船内にあった4万1000トンもの肥料のために「環境大惨事」を引き起こしました。この船の沈没は、アジアからヨーロッパへのデータ転送を担う通信ケーブルの損傷を引き起こした原因にもなったようです。フーシ派はケーブルを積極的に狙っていることを否定していますが、12月に攻撃が始まって以来、ケーブルが破損したのはこれが初めてではありません。

スエズ運河を通過する船舶量:

12月に攻撃が始まって以来、606隻の船舶が紅海を避けるために迂回しました。このため、スエズ運河を通過する船舶の数は過去最低となっています。2021年3月には、エバーギブン号が運河で立ち往生し、6日間通航を停止した事故がありました。コンテナ船の通航が129隻にとどまった2024年2月と比べると、2021年3月当時、事故で船舶が運河を通過できなかったにもかかわらず、船舶輸送数は278%多い数だったという比較結果が出ています。

スエズ運河を通過するコンテナ船数:このグラフは、1ヶ月に何隻のコンテナ船がスエズ運河を通過するかを示している。 フーシ派による商業船への攻撃は2023年12月から始まり、その結果、紅海ルートを回避したことで、スエズ運河を通過する船舶の量は大幅に減少している。1月と2月は近年で最も通航数が低くなっている。

3月の初期の数字を見る限り、この数字は引き続き低いまま続くことが見込まれます。また、ルビマー号の沈没により、さらに減少する可能性もあります。環境へのリスクを軽減するため、危険物を積んだ船舶は紅海を通らずにアフリカ周辺を迂回することを選ぶかもしれません。

輸送時間への影響:

紅海を回避するために航路を変更する船舶は、運河を利用する航路と比較すると、輸送時間が中央値で7日から10日増加します。以下のチャートは、3月10日までの主要航路の週間輸送時間の中央値を示しています。

紅海の主要貿易ルートにおけるコンテナ輸送時間の週間中央値コンテナ輸送時間(トランジット・タイム)とは、コンテナが出発港でゲートインしてから目的港でゲートアウトするまでにかかる日数のことである。 フーシ派による商業船への攻撃は12月10日の週から始まり、荷主は紅海周辺の船舶を迂回させるようになった。コンテナが最終目的地に着岸し始めるにつれ、輸送時間の増加が明らかになりつつある。

 中国発ヨーロッパ行き、東南アジア発ヨーロッパ行き、東南アジア発アメリカ東海岸行きはいずれも中央値で9〜10日増加しています。幸いなことに、この数字は横ばいになっており、キャリアが今後も紅海を避け続けるとなると、これらの輸送時間は新たな標準数値となるでしょう。下図は、アジアからヨーロッパおよび米国東海岸の主要港までの輸送時間の中央値を示しています。

アジアからの船舶の輸送時間の中央値(1週間あたり):船舶トランジットタイムは、船舶が積出港を出発してから荷揚げ港に到着するまでの時間を計測。船舶がスエズ運河を通らずに喜望峰を迂回するようになったため、アジアを出航する船舶の輸送時間が増加。

 

ロッテルダムとノーフォークはここ数週間安定してきていますが、アントワープ、ハンブルグ、サバンナは変動が続いています。しかしこれは、アジア発の港湾と港湾運営の違いによるところが大きく影響していると思われます。というのは上記のすべての港の輸出入のどちらにおいても滞留率は安定しており、すべての遅延が輸送時間の増加に関連していることを示唆しています。

以下の船舶スケジュールの信頼性チャートは、スケジュールの更新に基づき、輸送中のコンテナがどの程度遅れるかを追跡したものです。遅延は主要航路で9日から11日の間で推移しています。これまでのところ、上のチャートに反映されている実際の輸送時間(中央値は7~10日に近い)に鑑みるに、キャリアは実際より長い輸送時間を見込んでいるようです。

週間船舶スケジュールの信頼性-遅延日数中央値:スケジュールの信頼性は、船舶スケジュールに基づいて、船舶が当初の到着予定時刻を過ぎて到着する日数を測定する。 フーシ派による商業船への攻撃が始まって以来、更新されたスケジュールに基づく遅延日数の中央値が増加している。 これまでのところ、最も影響を受けているのは東南アジアからヨーロッパへの航路である。

 

上のグラフは、キャリアがスエズ運河を通過する前提でスケジュールを発表し続けていることを示しています。今後、喜望峰を通過することを前提にスケジュールを発表するか、そうでなければこの遅延日数は高いままが続くことが見込まれます。

  

アフリカの港への物量流入:

アフリカの港湾では、迂回船による物量の増加が見られます。迂回した船はアフリカの32の港に寄港していますが、迂回船による物量が最も多い港は、タンジェ、ダーバン、ロメ、ダミエッタ、エル・デケリアで、タンジェが最も多く寄港しています。

アフリカの港の船舶数: 紅海周辺での船舶の迂回により、アフリカの港湾では船舶の輸送量がさらに増加している。 このグラフは、12月11日の週から始まったフーシ派による商業船への攻撃により、迂回した船舶が各港にどれだけ入港しているかを概説したものである。 タンジェ港(Tanger-Med)は、迂回した船舶による船舶数の増加が最も大きい。

 

ダーバン港は、港で60隻もの船舶が待機する滞貨を抱え、物量の増加による問題について公に警鐘を鳴らした最初の港です。紅海紛争はこれを助長するものではないが、混雑の原因はそれだけではない。根本的な原因は、設備の老朽化とインフラへの投資不足です。タンジェ港はアフリカで最もパフォーマンスの高い港としてランクされているものの、物量の増加による影響を免れることはできません。下のグラフが示すように、輸出入ともに混雑の変動が激しくなっています。輸入の滞留は安定してきているようですが、輸出は先週時点で港での滞留時間の中央値が1週間となっています。

タンジェ港の輸出入滞留時間:タンジェ港は、アフリカ周辺を迂回する船舶の中で最も船舶数が増加している。 その結果、港のオペレーションは苦戦を強いられており、それはコンテナ滞留時間の増減が物語っている。

 

アフリカの港湾を取り巻く混雑の懸念はあるが、これらの港湾に対する世界的な注目が高まることで、港湾が将来も存続可能な選択肢であり続けるよう、投資と改善を推し進めることができるかもしれません。短期的には、港湾貨物量の増加は地域経済により多くの資金をもたらし、港湾の仕事に対する労働需要が増加する可能性があります。  

スエズ運河の貿易の歴史:

スエズ運河は1869年、地中海と紅海を経由して北大西洋とインド洋を結ぶために開通しました。それ以来、世界のサプライチェーンにとって不可欠な貿易ルートとなり、船舶がアフリカを一周するのに必要な7~20日の旅程を短縮しています。2021年に船舶が立ち往生し、6日間運航が停止したように、船舶の流れが中断することは貿易に大きな影響を与える可能性があります。 

海上輸送キャリアが運河を迂回する船舶のルートを変更する計画を発表しているため、スエズ運河を利用する貿易レーンは大幅な遅延に備える必要があるでしょう。

第一線で働く船員の安全への配慮

project44は、紅海の危機に関する最新情報を頻繁に提供しています。同時に、この困難な時期において、船舶の乗組員の安全が最優先事項であることに変わりはありません。乗組員の方々の安全を心よりお祈り申し上げます。

 

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